ブラケットの種類と特徴を解説— 審美性・強度・操作性に応じた選び方のポイント —

ワイヤー矯正において、ブラケットの選択は治療設計そのものに関わる大切な要素です。

現在では複数の種類が存在し、審美性・強度・コスト・チェアタイムなど、さまざまな観点から選択肢を検討する必要があります。

今回は、それぞれのブラケットの特徴と臨床での使い分けについてまとめました。

目次

ブラケットとは?

ブラケットとは、歯面に直接装着し、矯正用ワイヤーを通すための装置です。

見た目は小さなパーツですが、歯の移動を正確にコントロールするうえで非常に重要な役割を担っています。

選ぶブラケットによって、治療効率や患者満足度が大きく変わるため、各種の特徴を理解したうえでの選択が必要です。

ブラケットの主な種類とその特徴

矯正治療で用いるブラケットは、素材や固定機構の違いによって操作性や審美性が大きく変わります

ここでは臨床で出番の多い4タイプを取り上げ、それぞれの強みと留意点を整理しました。

症例の目的や患者さんの要望に合わせて最適な選択ができるよう、比較の視点としてご活用ください。

① 審美ブラケット(セラミック・プラスチック)

審美ブラケットは、審美性重視の症例に最適です。

主に前歯部に使用されます。

審美ブラケットは素材の違う2種類があり、それぞれの特徴は次のとおりです。

プラスチックブラケットの特徴
  • 安価で導入しやすい
  • 欠けやすく削れやすいため、結紮が難しくなるリスクあり
  • 何度も付け替えるとコストのメリットがなくなる
セラミックブラケットの特徴
  • プラスチックより強度が高く、破損しにくい
  • コストはやや高め
  • 審美性を優先したいが、ある程度の強度も必要な場合に有効

② メタルブラケット

メタルブラケットは、耐久性・安定性を重視したスタンダードタイプです。

メタルブラケットの特徴
  • 特に臼歯部(5~7番)に使用されることが多い
  • 金属製のため耐久性に優れ、壊れにくい
  • 6番・7番は基本的にメタル

メタルブラケットは、見た目より強度や操作性を重視する場面に向いています。

③ セルフライゲーティングブラケット

セルフライゲーティングブラケットは、近年注目されている操作性に優れたタイプです。

セルフライゲーティングブラケットの特徴
  • シャッター付きでワイヤーを固定
  • 摩擦が少なく、スライディングメカニクスとの相性が良い
  • モジュール・結紮不要でチェアタイムが短縮できる

セルフライゲーティングブラケットは、シャッターが破損した場合は再装着または手動で結紮が必要です。

また、シャッターが壊れる頻度は少なくありません

セルフライゲーティングブラケットが向いているのは、効率的に治療を進めたい場合や、アライメント、スペースクローズのステージでの滑り重視の症例です。

④ ローフリクションブラケット

ローフリクションブラケットは、セルフライゲーティングに類似していますが、さらに摩擦軽減を意識したタイプです。

ローフリクションブラケットの特徴
  • キャップ式でワイヤーを固定
  • フルパッシブ設計(常に摩擦が少ない)
  • スムーズな移動と脱着のしやすさが強み

ローフリクションブラケットは、摩擦を最小限に抑えて移動効率を重視したい場合に有効です。

ブラケット選択のポイント

ブラケット選びに影響する要素を以下の表にまとめました。

要素内容
治療方針抜歯・非抜歯、スライディングメカニクスか否か
審美性前歯に目立ちにくいブラケットを使いたいか
強度臼歯部や力をかける部位には高強度な素材を
チェアタイム調整にかける時間と操作のしやすさ
コスト患者希望と医院の導入機材によって選択肢が変動

まとめ:自院・症例に合わせた選択が鍵

今回紹介したブラケットの主なメリットと注意点は下記のとおりです。

ブラケット主なメリット注意点
プラスチック安価・目立ちにくい欠けやすい・摩耗しやすい
セラミック強度・審美性の両立やや高価
メタル耐久性・精度高い審美性に劣る
セルフライゲーティング操作が簡便・摩擦少ないシャッター破損時の対応必要・高価
ローフリクションスムーズな動き・摩擦低いシステムに慣れる必要あり

矯正を学ぶ先生・衛生士の皆さんへ

ブラケットの選択は、症例ごとの設計と患者対応の両方に関わる重要な判断です。

操作性・コスト・美しさ・チェアタイムのバランスを見極めながら、自院の治療方針や診療スタイルに合ったブラケットを選びましょう。

患者満足度と治療効率の両立は、ブラケット選択から始まっています。

ミノアカライブラリーを運営するMino’akaでは、矯正スタディグループMino’aka Ortho Academiaとして年4回の矯正勉強会を開催しています。

現役の矯正医や一般医が参加し、積極的に交流しながら実践的なレクチャーを行っています。

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今後も技術を磨きながら、より良い矯正治療を実践していきましょう!

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