スペースクローズとは?抜歯後や隙間を閉じる矯正治療の基本工程を解説

矯正治療において、「スペースクローズ(space close)」という言葉は非常に頻繁に登場します。

とくに抜歯矯正では、スペースクローズが治療全体の進行を左右する中心的な工程の一つです。

本記事では、スペースクローズの意味から臨床でのポイントまでを、歯科医師・歯科衛生士向けに整理してお伝えします。

目次

スペースクローズとは?

「スペースクローズ」とは、歯列内に存在する隙間(スペース)を閉じる処置のことです。

最も一般的な使用例は、抜歯後のスペースの閉鎖です。

その他にもスペースクローズは以下のようなケースで用いられます。

・先天欠如や歯の大きさの不調和によってできた自然なすき間がある場合
・元々すきっ歯傾向がある患者で、隙間が点在している場合
・補綴前処置として行うスペース調整の場合

どのパターンでも、「スペースをコントロールしながら閉じる」という基本は共通です。

カルテでの記載方法

矯正記録では、スペースクローズを次のように記載しています。

Close(S)
→ Sサイズのパワーチェーンを用いてスペースクローズを行った

S・M・Lなどパワーチェーンのサイズを明示すると、かけた力の強さや設計の意図が記録として残りやすくなります。

スペースクローズの重要性

抜歯症例では、スペースクローズに要する期間が治療ステージの中で最も長くなることが少なくありません。

そのため、この工程がスムーズに進行するかどうかで、治療全体のスピードや予後が大きく変わります

・進みが遅い → 治療期間が延び、患者のモチベーションが低下する
・力が強すぎる → 歯根吸収やアンカーロス、意図しない移動が起こるリスクが増す

スペースクローズの成否は、適切な力加減進行状況の管理が求められます。

進行の確認方法:スライディングメカニクスの場合

たとえば、スペースクローズをスライディングメカニクスで行っている場合、ワイヤーの出具合」が、スペースクローズの進行を客観的に判断する一つの指標です。

STEP
前歯を後方へ引っ張る力で抜歯スペースを閉じる
STEP
ワイヤーが後方のブラケット(例:7番)の遠心から出てくる
STEP
ワイヤーの突出具合を確認する

シンプルな方法ですが、見落としやすいポイントです。

スライディングメカニクスについては、下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

スペースクローズのまとめ

ここまでの内容を踏まえ、スペースクローズの要点を下の表に集約しましたのでご確認ください。

項目ポイント
治療の対象抜歯スペース、自然な隙間、補綴スペースなど
方法主にパワーチェーンやコイルでのスライディングメカニクス、ループでのループメカニクス
記載方法Close(S)など、力の設計も含めてカルテに記載
注意点強すぎる力での副作用、進行停滞の早期発見が重要

スペースクローズは、矯正治療の“後半を支配する”重要ステージといっても過言ではありません。

力のバランス・確認・調整を繰り返しながら、丁寧に進めていきましょう。

矯正を学ぶ先生・衛生士の方へ

調整のたびに、スペースがどのくらい閉じているか?反作用やアンカー側の動きが起きていないか? を確認することがとても大切です。

スペースクローズは「焦って詰める」のではなく、「整えて導く」というイメージで進めると、結果的に患者さんにも術者にもやさしい治療に繋がります。

ミノアカライブラリーを運営するMino’akaでは、矯正スタディグループMino’aka Ortho Academiaとして年4回の矯正勉強会を開催しています。

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今後も技術を磨きながら、より良い矯正治療を実践していきましょう!

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