矯正治療を行う中で、「サイズアップ」と記載されたカルテを目にしたことはありますか?
矯正歯科では頻繁に使われる用語ですが、その具体的な意味を正しく理解しているでしょうか?
この記事では、「サイズアップ」の概念・実施手順・治療への影響について詳しく解説します。
とくに矯正治療を習得したい歯科医師の方にとって役立つ記事になっていますので、参考にしてください。
矯正治療における「サイズアップ」とは?

矯正治療における「サイズアップ」とは、ワイヤーの太さを段階的に太くするプロセスのことです。
適切にサイズアップができると、歯の移動を計画通りに進められます。
サイズアップについて詳しく解説し、その重要性についても紹介しましょう。
サイズアップとは?
サイズアップとは、矯正治療の進行に合わせてワイヤーの太さを変更し、歯列のコントロールを強化するための工程のことです。
初期段階では細いワイヤーを使用し、徐々に太いワイヤーへと変更していきます。
この段階的な調整により、より安定した力を歯に加えることが可能になります。
サイズアップは矯正治療における重要な作業の一つです。
ワイヤー交換の重要性
ワイヤー交換は、矯正治療の成功に直結する重要な作業です。
適切なタイミングでサイズアップを行わなければ、歯の移動が遅れたり、計画通りに矯正が進まなかったりする可能性があります。
段階的にワイヤーの太さを変更すると、最適な力が加わり歯列が整いやすくなります。
サイズアップの具体的な手順

サイズアップは以下の手順でワイヤーを交換します。
ブラケットに過度な力がかからないよう注意しましょう。
患者さんが不快に感じないよう、慎重に作業を進めます。
ワイヤーが多く飛び出て口腔内に刺さることを防ぎます。
正しくワイヤーが収まっているか確認しましょう。
これらのステップを正しく行うと、矯正治療がスムーズに進行し理想的な歯列へと導けます。
スタッフ間のやり取りとカルテの記録方法

矯正治療を円滑に進めるためには、スタッフ間での適切な情報共有と、正確なカルテ記録が不可欠です。
スタッフ同士のやり取りにおいても、「今日はサイズアップ予定です」と口頭で伝えられます。
カルテには「サイズアップ」とだけ記載するのではなく、変更したワイヤーのサイズを具体的に記録することが重要です。
カルテへは以下のように書かれることがあります。
記載例:「A/1622ss」
意味:A/ = 上顎アーチ、1622ss = .016×.022インチのステンレススチールワイヤー
このように詳細を記録しておくと、治療の進行状況を的確に把握し次回の治療計画をスムーズに進められます。
成功の秘訣!サイズアップのポイントと対処方法

サイズアップを適切に行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
サイズアップ時の注意点や、ワイヤーが正しく収まらない場合の対処方法について詳しく解説しましょう。
サイズアップ前のワイヤーの状態をチェック
サイズアップを行うときは、現在のワイヤーがすべてのブラケットスロットに正しく収まっているか?を確認するのが重要です。
もしワイヤーが正しく収まっていなければ、太いワイヤーも正しくセットできず、計画通りに治療が進められません。
ブラケットスロットにワイヤーが正しく収まっているかどうかの確認は、
- 目視(正面・側面・咬合面からスロットとワイヤーの隙間のチェック)
- ミラーでも確認
- 軽く圧をかけてみる
などの方法でしっかり観察しましょう。
ワイヤーが収まらないときの対処方法
ワイヤーがスロットにしっかり収まらない場合、結紮(けっさつ)を強めに行います。
結紮が強めにできると、ワイヤーの固定が強化されます。
タイトな結紮におすすめのアイテムは次の2つです。
・結紮線(リガチャーワイヤー):しっかり固定するための細いワイヤー
・タイングプライヤー:結紮をしっかり行うための専用器具
最適なアイテム選びは、治療を成功させるために欠かせません。
結紮の技術を磨き、治療の精度とスピードを向上させましょう。
まとめ
「サイズアップ」は矯正治療における重要なステップで、適切に実施できるとスムーズに歯を動かせます。
- サイズアップの目的 – ワイヤーの太さを段階的に変え、歯の移動をコントロールする
- 正しい手順を守ることが重要 – 事前確認を怠らず、適切にワイヤーを交換する
- 結紮技術の向上が鍵 – 確実な結紮を行い、治療精度を高める
これらを実践すると、よりスムーズで効果的な矯正治療を提供できるようになりますよ。
ぜひ正しい知識と技術を身につけましょう!
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