矯正治療のワイヤー選びは、治療の成否を左右する重要なポイントです。
特に、治療初期に使用される「NT」は、その特性を理解するとより効果的な治療ができます。
今回は、NT(ニッケルチタンワイヤー)について詳しく解説します。
NTとは?

NTとは「ニッケルチタンワイヤー」の略称で、矯正治療で広く使用されるワイヤーの一種です。
カルテ上では「1925NT」と表記したり、Ni-Tiと書かれたりすることもあります。
また、呼び方も「ニッケルケルチタン」ではなく「ナイタイ(Ni-Ti)」と呼ぶことも多いです。
このワイヤーの最大の特徴は、形状記憶性と柔軟性を兼ね備えていることです。
そのため、特に歯の凸凹(叢生)が強い治療初期段階で頻繁に使用されます。
NTの特徴
NT(ニッケルチタンワイヤー)は、矯正治療において非常に重要な役割を果たすワイヤーです。
特にその“形状記憶性”と“柔軟性”は、治療初期の歯の移動をスムーズかつ負担の少ないものにしてくれます。
ここでは、NTが持つ具体的な特徴を詳しく見ていきましょう。
形状記憶の性質
NTは元の形に戻ろうとする「形状記憶の力」を持っています。
この性質を活かし、歯列を適切な位置へ導くことが可能です。
柔らかい性質
NTはステンレススチールワイヤーなどと比べると非常に柔らかく、歯に加わる力が弱いです。
そのため患者さんの負担を軽減しながら矯正を進められます。
永久変形しにくい
NTはある程度の力が加わっても、ぐにゃっと曲がりながらスロット(ブラケット内の溝)にしっかり収まり、歯に安定した力を加えられます。
特に、捻転歯(ねじれた歯)の修正などにNTは適しています。
NTの使用シーン
NTワイヤーは、その柔軟性と形状記憶性を活かして、治療の初期を中心にさまざまな場面で使用されます。
ここでは代表的な使用シーンを紹介します。
治療初期
NTは、歯列の乱れが大きい治療初期に使用されることが多いです。
柔らかい力で歯を動かし痛みが少ないので、患者さんにとっても負担が少ない選択肢となります。
捻転歯の修正
NTはブラケットにしっかり収まりながら歯に力を加えられます。
そのため、捻転した歯の修正に適しています。
痛みを抑えた治療
SS(ステンレススチールワイヤー)のような硬いワイヤーを初期段階で使用すると、痛みを強く感じることがあります。
その点、NTは痛みが軽減されやすいため、患者さんに優しい治療が可能です。
NTのメリット

NTは、患者さんにも術者にも嬉しい利点がいくつもあります。
ここでは、実際の臨床で感じられる代表的なメリットを見ていきましょう。
これらの特長から、NTは患者さんの快適性と治療のスムーズさを両立させる重要なアイテムとなっています。
NTの注意点
扱いやすく優れた特性を持つNTワイヤーですが、使用にあたってはいくつか注意すべき点もあります。
安全で効果的な治療を行うために、あらかじめ把握しておきましょう。
ワイヤーの脱離や破損
細いNTは特にブラケットから外れたり、折れたりするリスクが高くなります。
そのためワイヤーの選択や固定方法には注意が必要です。
治療の進行に伴いより硬いワイヤーが必要
NTは柔らかい分、治療の中盤以降では力不足になることがあります。
治療中盤以降では、SS(ステンレススチールワイヤー)など、より剛性の高いワイヤーへ適切に移行することが重要です。
まとめ
矯正治療では、ワイヤーの特性を理解し、適切な場面で使い分けることが成功のカギとなります。
特にNTは、治療初期において患者さんの負担を軽減しつつ、スムーズな歯の移動を可能にする重要なツールです。
ただしワイヤーが細すぎると脱離や破損のリスクが高まるので、使用時の対策をしっかり行いましょう。
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